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東京高等裁判所 昭和39年(行ソ)1号 判決

本件における事件の経緯についての請求原因第一項の事実は、本件記録およびこれに添付の当裁判所昭和三五年(行ナ)第六号、最高裁判所昭和三五年(オ)第六八四号および同昭和三六年(ヤ)第三三号各事件の記録に徴し、当裁判所に顕著なところである。

まず、民事訴訟法第四二〇条第一項第六号にかかる再審の事由(一)の点について考えるのに、同号の再審事由の場合においては、同条第二項により、偽造または変造の行為につき有罪の判決が確定したときまたは証拠欠缺外の理由により有罪の確定判決をうることができないときに、再審の訴を提起しうることが明らかであるところ、本件においては、この要件を具備することを認めうる証拠はないから、再審原告の右(一)の事由にもとづく再審請求は、偽造または変造の成否などその余の点について判断するまでもなく、不適法である。(なお、本件の出願人名義変更届は、その書類の差出について期日または期間が法令により定められまたは特許庁長官、審判長等により指定されたものではないから、本件に適用のある旧実用新案法施行規則第七条の準用する旧特許法施行規則第一七条にいう差し出すべき期日もしくは期間の定めがある書類に該当せず、したがつて、郵便物受領証により証せられた日時または消印記号に記載された日時に、差出の効力を生ずべきものではない。また、再審原告のいう<省略>判も、それが押されたからといつて、それにより特別の法律上の効果を生ずるにいたるものではなく、特許庁内部の事務処理の便宜から出た一応の検印にすぎないと解される。)

つぎに、再審原告は、再審の事由(二)の点において、本件判決言渡のために指定された期日が告知されなかつたことを再審事由として主張するが、民事訴訟法第四二〇条第一項には、このような事項を再審事由として規定していないから、この事由(二)にもとづく再審請求も不適法である。もつとも、再審原告は右事由が同項第一号に該当すると主張するが、同号は、欠格事由があつたり任命の無効な裁判官が構成員になつた場合、裁判官の数が不足しあるいは基本たる口頭弁論に関与しない裁判官が裁判に加わつたりした場合などのように、判決裁判所が裁判所法および民事訴訟法等法律の規定にしたがつて構成されていなかつた場合をいうのであり、判決言渡期日の告知がなかつたとの事実が含まれないことはきわめて明らかであるばかりでなく、これが再審事由に当ると仮定しても、ことがらの性質上、再審原告において判決の送達を受けると同時に、これを知ることができる事項であり、本件においては判決確定後すでに民事訴訟法第四二四条第一項の再審の訴提起期間を経過した後の主張であることが明らかであるから、この点からしても右再審請求は、不適法といわなければならない。

右のとおりであつて、本件再審の訴は、その余の点にわたつて判断するまでもなく、不適法であることが明らかであるから、これを却下すべきものとする。

〔編註〕 本件における再審請求の原因は左のとおりである。

一 (事件の経緯)

再審原告は、昭和二九年一二月一〇日その発明にかかる「牛乳瓶口頭部の包覆方法」について特許出願し(昭和二九年特許願第二六九二九号)、その後昭和三〇年九月一〇日、これを名称「瓶口冠蓋」 とする実用新案登録出願に変更したが(昭和三〇年実用新案登録願第四二〇一七号)、昭和三三年一〇月三一日拒絶査定を受けたので、同年一二月九日これを不服として抗告審判を請求した(昭和三三年抗告審判第三〇四三号事件)。しかるに、特許庁は、昭和三四年一二月二二日再審原告の抗告審判の請求は成り立たないとの審決をし、その謄本は再審原告に昭和三五年一月一二日送達されたので、再審原告は、同年二月一〇日再審被告を相手方として東京高等裁判所に右審決の取消を求める訴を提起したが(昭和三五年(行ナ)第六号事件)、同裁判所は、同年四月七日右訴を却下する旨の判決をした。再審原告は、同月二一日これを不服とし最高裁判所に上告したが(昭和三五年(オ)第六八四号事件)、再審原告の申立は排斥され、右判決は、確定した。

右高等裁判所の判決の理由の要旨は、つぎのとおりである。すなわち、特許庁が旧実用新案法第二六条、旧特許法第一二八条の四第二項の規定により当裁判所に送付して来た本件出願および抗告審判請求事件の記録によれば、再審原告の本件実用新案登録出願については、再審原告および松山茂三が共同出願人として審査および抗告審判を受け、その抗告審判の審決も右両名に対してされているところ、この審決の取消を求める本件訴は登録を受ける権利を有する者全員が共同して提起することを要するものであるのに、再審原告一人が原告となつて提起した不適法のものであり、右松山茂三については法定の出訴期間が昭和三五年二月一一日で満了し、いまだに同人の訴の提起はないから、その欠缺を補正するに由なく、本件訴は却下すべきものである。

二 (再審の事由)

(一) 再審原告は、松山茂三から、右出訴期間満了の日である昭和三五年二月一一日に、前記登録出願にかかる実用新案につき同人の有する登録を受ける権利の持分全部を譲り受け(譲渡証書甲第二号証)、即日特許庁に対しその旨出願人名義変更の届を郵便により差し出し(出願人名義変更届甲第一号証、同日の消印ある右届封入に用いた封筒甲第三、四号証、同日午後〇時より六時の受付印ある大崎郵便局の書留郵便物受領証甲第五号証)、翌一二日特許庁に到達した(甲第一号証、同第四号証)。この出願人名義変更届は、本件に適用のある旧実用新案法施行規則第七条、旧特許法施行規則第一七条にいう差し出すべき期日もしくは期間の定めのある書類に当る(これを同条項の書類に当らないとする再審被告の見解は矛盾している。それは、本件出願人名義変更届が昭和三五年二月一一日までに特許庁に提出されることを要する書類であり、再審被告も、これを前提とし右書面が出訴期間満了の日の翌日である同月一二日に特許庁に到達し、同日届出の効力を生じたにすぎないとしていることから明らかである。)から、郵便による右差出の日である昭和三五年二月一一日にその届出の効力を生じ、再審原告は、同日すべての関係において右登録を受ける権利の単独権利者になつた。しかも、右出願人名義変更届が同日届出の効力を生じていることは、甲第一号証中の作成日付昭和三五年二月一一日の部分に特許庁の<省略>判が押され、その効力が確認されていることからも明らかである(なお、甲第九号証参照)。

ところが、再審被告は、右譲渡証書および昭和三五年二月一一日の届出が確認された出願人名義変更届を、不法にも同月一二日届出にかかる無効のものとして扱い、すなわち、届出日を改変し、本件出願および抗告審判請求事件の記録に編綴せず、東京高等裁判所に送付しなかつたため、前述のとおり、訴却下の本件判決がされるにいたつたものである。再審原告は、この送付のない事実を昭和三九年八月二四日にはじめて知つた。これは、判決の証拠となつた文書が偽造または変造手段によつて偽装されたものであり、民事訴訟法第四二〇条第一項第六号の再審事由に当る。

(二) また、東京高等裁判所は、昭和三五年四月二日、本件判決の言渡期日を同月七日午前一〇時と指定しながら(甲第七号証)、当事者に対し同期日の告知をしないまま(甲第八号証参照)、その言渡をし、再審原告は、この事実を昭和四〇年五月五日にいたりはじめて知つた。これは、同条第一項第一号の法律の規定にしたがい判決裁判所を構成しなかつたときとの再審事由に当る。

三 (本案についての主張)

再審原告が登録を出願した前記「瓶口冠蓋」の考案の要旨は、「瓶Aの瓶口aより面積の大きい熱可塑性合成樹脂皮膜1を瓶口aの上に冠せ、その皮膜1を瓶Aの外周面に沿うて垂下しかつ絞締して形成された周縁の多数の襞の重合部(3)を溶着させて瓶Aの頭部外周面に密着させた瓶口冠蓋の構造」であるが、特許庁が、再審原告のした拒絶査定不服抗告審判の請求事件について昭和三四年一二月二二日した審決は、本願実用新案と引用例たる英国特許第五七六二八三号明細書抜粋(グループⅩⅧ)とを比較し、両者はともに熱接合性を有する材料の一枚の皮膜を瓶口上に冠せ、その皮膜を瓶頭の外周面に沿つて接触するようにして周縁部に多数の襞の重合部をもつようにした瓶口冠蓋である点で一致しているとしている。

しかしながら、右審決は、本願実用新案の使用資材たるビニール系熱可塑性合成樹脂皮膜と引用例の使用資材たる塩酸ゴム皮膜とが全く異なる特質をもつているのにこれを誤認し、前者にない後者の熱封緘性をことさらに熱接合性と称して本来の熱封緘性を除外し、前者と同様多数の襞の重合部を後者の熱接合性によつて少なくとも密着状態にすることができると強弁したものである。後者の資材をもつてしては、本願実用新案の結果を得ることは、とうていできない。したがつて、本願実用新案をもつて右引用例に類似し旧実用新案法第三条第二号に該当するので同法第一条の新規な考案としえないとした右審決は、判断を誤つたものであり取り消されるべきものである。

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